鋳物の熱処理とは?目的や種類、効果をわかりやすく解説

鋳物は溶かした金属を型に流し込み、冷やして固めることで製造されます。しかし、鋳造しただけですべての製品がそのまま使用できるわけではありません。
鋳造時には、金属内部に応力(※)が残ったり、材料の組織が不均一になったりすることがあります。そのまま使用すると、加工時の変形や割れ、強度不足などにつながる可能性もあるため、製品の用途や求められる性能によっては、『熱処理』という工程がおこなわれます。
※応力…物体が外から力を受けた時、物体の内部に発生する力

なぜ鋳物に熱処理が必要?

鋳物は溶けた金属が鋳型の中で冷えて固まる際、部位ごとに冷える速度が異なります。
例えば、厚みのある部分はゆっくり冷え、薄い部分は早く冷えるため、製品内部ではさまざまな応力が発生します。
この応力が残ったままだと、加工時や使用中に変形や割れが起こる原因となることがあります。
また、冷却速度の違いによって金属組織もばらつきが生じ、強度や硬さ、加工性などが均一にならない場合もあります。
熱処理は、こうした鋳造によって生じる内部応力や組織のばらつきを改善し、製品本来の性能を引き出すためにおこなわれます。
もちろん、すべての鋳物に熱処理が必要というわけではありません。
使用する材質や製品の用途、求められる性能によって、熱処理をおこなうかどうかが決定されます。

熱処理の目的

鋳物に熱処理を施す目的は、一つではありません。製品に求められる性能に応じて、さまざまな目的で熱処理がおこなわれています。

・強度、硬さを向上させる

熱処理によって金属組織を変化させることで、鋳物の強度や硬さを高めることができます。
例えば、摩耗しやすい部品や、大きな荷重がかかる機械部品では、高い強度や耐摩耗性が求められるため、熱処理がおこなわれます。

・内部応力を除去する

鋳造時に発生した内部応力を取り除くことも、熱処理の大きな目的です。
内部応力が残っていると、機械加工中に寸法が変化したり、使用中に変形や割れが発生したりする原因になります。
応力を除去することで、品質が安定し、安心して使用できる製品へと仕上げることができます。

・加工しやすくする

鋳物の中には、硬すぎて切削加工が難しいものもあります。
熱処理によって硬さを適度に調整することで、切削性を向上させることができます。
加工工具への負担も軽減されるため、加工精度の向上や工具寿命の延長にもつながります。

・寸法を安定させる

高い精度が求められる製品では、長期間使用しても寸法が変化しにくいことが重要です。
熱処理によって内部組織を安定させることで、経年変化や加工後の変形を抑え、寸法精度を維持しやすくなります。
精密機械部品や工作機械の部品などでは、このような目的で熱処理が採用されることがあります。

・製品寿命を延ばす

熱処理によって強度や耐摩耗性、靭性(粘り強さ)などを向上させることで、製品の寿命を延ばすことができます。
過酷な環境で使用される産業機械や建設機械、自動車部品などでは、熱処理による性能向上が長寿命化につながっています。

代表的な熱処理の種類

熱処理にはさまざまな種類があり、製品の材質や用途、求められる性能によってい適切な方法が選ばれます。
ここでは、鋳物によく用いられる代表的な熱処理を紹介します。

・焼きなまし

焼きなましは、金属を一定の温度まで加熱した後、ゆっくりと時間をかけて冷却することで、鋳造時に発生した内部応力を取り除き、金属組織を安定させます。
鋳物は冷却時に、内部に応力が残ることがあります。この応力が残ったままだと、加工中の変形や割れの原因となるため、焼きなましによって応力を除去します。
また、材料が適度に軟らかくなるため、切削加工がしやすくなるというメリットもあります。鋳物ではありませんが、アクセサリーを作る際に銅や銀の丸棒を少し曲げてバーナーでなまして冷却を繰り返し、指輪の形にしていく加工方法などもあります。
特に鋳鉄製品でも焼きまなしが広くおこなわれており、品質の安定や加工性の向上に欠かせない熱処理です。

・焼きならし


焼きなましは加熱後に炉内でじっくりと冷却するのに対し、焼きならしは空気中で比較的早く冷却する違いがあります。金属組織が均一になり、強度や靭性のバランスを整えることができます。
鋳物は冷却条件によって組織にばらつきが生じることがありますが、焼きならしをおこなうことで、機械的性質のばらつきを抑え、より均一な品質に仕上げる効果があります。作業自体は焼きなましと近いですが、性質を変化・制御するのが「焼きなまし」、性質の向上を目的とするのが「焼きならし」という点が違います。
主に鋳鋼品などでおこなわれることが多い熱処理です。

・焼入れ、焼戻し

焼入れ・焼戻しは、強度や耐摩耗性が求められる鋳物に用いられる代表的な熱処理です。
焼入れは日本刀や工具でよく見るような、真っ赤に加熱したあと水につけて急冷させる作業をイメージするとわかりやすいです。
まず焼入れで金属を高温まで加熱した後、水や油などで急速に冷却します。これにより金属組織が変化し、硬さや強度、耐摩耗性を高めることができます。しかし、焼入れだけをおこなうと金属は硬くなる一方、衝撃に弱く割れやすい状態になります。そこでおこなわれるのが焼戻しです。
焼戻しは、焼入れ後の金属を再び適度な温度まで加熱し、その後冷却する熱処理です。焼入れによって得られた硬さをある程度保ちながら、粘り強さ(靭性)を回復させ、割れにくくバランスの取れた性質に調整します。
そのため、焼入れ・焼戻しはセットでおこなわれることが多く、自動車部品や建設機械部品、産業機械部品など、高い強度と耐久性が求められる製品で広く採用されています。

・時効処理

時効処理は、金属を一定の温度で保持したり、時間をかけて組織を安定させたりする熱処理です。
主な目的は寸法変化を抑え、製品の精度を維持することです。
精密機械部品や金型などでは、加工後のわずかな変形が品質に影響するため、時効処理によって組織を安定させることがあります。
固体中に、冷却過程である温度以下になると別の結晶組織が出てくることを「析出(せきしゅつ)」と呼びます。析出した粒子の影響で硬くなる現象を析出硬化と言い、中でも時間とともに析出が進み自然に硬くなる現象を時効硬化と言います。アルミニウム合金などでは、時効硬化が顕著に出やすいため、時効処理を用いることが多くなります。

まとめ

熱処理は、鋳物の品質や性能を向上させるために重要な工程の一つです。
鋳造時に発生する内部応力を取り除いたり、強度や硬さを高めたり、加工性や寸法安定性を向上させたりと、製品に求められる性能に応じて適切な熱処理が選ばれます。 熱処理の方法には、それぞれ目的や特徴が異なります。そのため、材質や使用環境、製品の用途に合わせて最適な方法を選択することが大切です。

鋳物は、鋳造作業だけで完成するだけではありません。加工や熱処理など、さまざまな工程を経ることで、用途に応じた性能を備えた製品へと仕上げられます。
熱処理について知ることで、鋳物づくりへの理解もより深まりますね!

今回は鋳物の熱処理について、解説しました✨
次回の記事もお楽しみに!

最新の記事