私たちの身の回りにある金属製品には様々な金属加工法があります。
その中で「鋳造」と「鍛造」どちらも同じ金属加工で、名前もよく似ているため、同じものなの?と思われることがあります。しかし、その製造方法や特性には大きな違いがあります!
今回の記事では、鋳造と鍛造の違いについて解説させていただきます✨
製造方法

・鋳造
鋳造は金属を高温で溶かし、液状にして方へ流し込み、冷やし固める製法です。
溶かした金属を流し込むため、複雑な形状を比較的容易に作ることができ、細かいデザインや中空構造を持つ製品でも作ることが可能です。また製法によっては、型があれば大量生産が可能です。
※鋳造とは?~鋳造の特徴や工程、メリット・デメリットなどを解説!~ | 大洋産業株式会社
・鍛造
鍛造と言われて一番イメージしやすいものが「日本刀」です。鍛造は金属自体を加熱し、ハンマーやプレス機を使って直接金属を叩いたり、圧力を加えて変形させながら成形する加工法です。
金属の組織を圧縮しながら成形するため、内部組織が緻密になり、高い強度を持つ製品を作る事ができるのが特徴です。
特徴
鋳造と鍛造によって作られた製品はそれぞれどのような特徴があるのでしょうか?
例えば、車のタイヤホイールは鋳造・鍛造どちらの方法でも作られます。見た目もほとんど変わりませんが、どのような違いがあるのでしょうか?その違いは以下の通りです。

鋳造は、「複雑な形状を低コストで大量生産できる」という点が強みです。金属を液体状にし中子なども使用することで形状の自由度が高く、同じ型を使いまわす分、生産性も高くなり量産向きです。
一方で強度や耐久性は鋳造と比べると劣ります。下の図のように、鋳造品は製品内部にヒケ巣や砂、ノロなどの異物嚙み込みが発生しやすく、組織も冷却速度によるので部分的にまばらになりやすいです。

鍛造は「強度や耐久性に優れた製品が作れる」という点は強みです。図を見ても分かるよう、金属を押しつぶしながら成形するため繊維方向も形に沿って均一になり、密度が高くなるため割れや剥がれも発生しにくくなります。この金属繊維の方向性(メタルフロー)が鍛造最大の特徴ではないでしょうか。
一方で、上下方向から叩いて成形するため複雑な形状を作るには不向きな点があります。また、鍛造は余熱と成形を何度も繰り返すことが多く時間当たりの生産性が鋳造と比べ劣る点と、材料も製品と近い形のものを入手する必要があり、鋳造のように溶かして再利用という事が出来ないため、材料コストが高くなる点があります。
このように、それぞれのメリット・デメリットを考え、用途に応じた製法が選ばれています。
製品例
・鋳造で作られる製品

・自動車のエンジンブロック
・マンホールの蓋
・仏像や銅像
・フライパン
・鉄瓶 など
中空で一体成型で作る必要があるエンジンブロック。鉄系で肉厚なフライパンは保温や遠赤外線効果を期待し鋳造で作られていることがあります。
複雑な形状のものや、大量生産のメリットを活かした製品が作られます。
・鍛造で作られる製品

・ナイフ、カラトリー
・機械や建造物のボルト、ナット
・航空機部品
・スパナ、レンチ
・鉄道車両の車輪 など
硬さの必要な工具系や、鉄道車輪のように常に回転していて耐摩耗性が必要なものなど、強度や耐久性の高さが求められる製品が作られます。
鋳造と鍛造は、それぞれ異なる製造方法・特性を持っています。
製品の性能・形状・コスト・使用環境によって、どちらの方法で製造するのかが決まります。それぞれの特徴を理解し、利点を活かすことで高品質な製品を作ることができますね!
今回は鋳造と鍛造の違いについて解説させていただきました!
次回の記事もお楽しみに✨