金属を溶かす溶解炉の仕組みとは?大洋産業の高周波誘導炉を解説!

大洋産業で作られている上下水道用の鋳物製品のもととなる鉄、その鉄を溶かすために使用されるものが「溶解炉」です。溶解炉にも種類は様々あり、溶かす金属や用途によって使用される溶解炉も違い、溶解炉の仕組みも変わってきます。
今回は、大洋産業で使用されている高周波誘導炉の仕組みを例に解説していきます!

高周波誘導炉の仕組み

大洋産業でも使用されている高周波誘導炉とは、一般的に「電気炉」と呼ばれるものの一種です。
断面図イラストのとおり、金属を投入する「るつぼ」の周りに電流の流れる誘導コイルが設置されています。この誘導コイルに高周波電流を流すことにより、コイルの周りに磁界を発生させます。この電磁誘導によって、るつぼ内の金属に渦電流が生じ、ジュール熱(※)が発生します。高周波誘導炉はこの誘導加熱を利用して、金属を溶かすという仕組みになっていて、原理で言えばIHヒーターと同じです。
熱伝導が早く、他の溶解炉と比べ金属を溶かすのに時間があまりかからないことや、炉自体からススや排ガスは出ず、工場内の温度上昇を比較的抑えられる点から環境保全等のメリットがあります。
 ※ジュール熱・・・金属等に電流が流れた時、電気抵抗によって金属に発生する熱。

大洋産業では鋳鉄を作製する過程で温度を約1500℃まで上昇させます。高温から誘導コイルを保護するためにも、高周波誘導炉の裏側には冷却水を流すためのホースを繋げ、冷却システムにより水が循環して流れる仕組みとなっています。
写真の右側下2本から入り、2本⇒4本⇒8本のホースに枝分かれした後にコイルをぐるっと回って冷却し、熱くなった水は左側下2本から出ていき給水塔(クーリングタワー)へと循環します。左端についている丸いメーターが水温を検知し、設定温度より高いと異常警報が鳴る仕組みとなっています。

メンテナンスは必要?

電気エネルギーを熱源とする高周波誘導炉では、直火ではないため比較的安全に運用する事ができる点はメリットと言えます。
しかし、高温の溶湯(溶けた金属)により、炉内壁面の耐火物は少しずつ縦横ともに厚さが薄くなっていきます。特に、湯面上面はノロが付着しやすく、撹拌の多い中腹あたりが最も炉壁の消耗が激しいため、円筒管から最終的にはタル型のような形になります。万が一、溶湯が冷却水に触れると水蒸気爆発と言った重大事故が発生する危険性もあります。
そのため、高周波誘導炉内の「築炉作業」といった定期的なメンテナンスが必要となります。
築炉作業では、炉壁の耐火物の消耗具合を測定し、炉に変形や破損等、異常がないか確認します。
劣化した耐火物を解体したのち炉の中から取り出し、炉壁の耐火物となるシリカを投入し押し固めるといった施工を行います。

高周波誘導炉の省エネ化を実現!

高周波誘導炉は仕組みで解説したとおり、大量の消費電力が必要となってきます。
コークスを熱源とするキュポラ炉に比べ、高周波誘導炉は省エネルギー・CO₂削減に優れていますが、大洋産業でも高周波誘導炉の電気使用量が社内の約7割と大量の電力を使用しているため、二酸化炭素の排出量は決して少なくはありません。
その課題を解決すべく、大洋産業では2022年1月に3t炉・2.5t炉と2基の高周波誘導炉の内、まずは2.5t炉を最新の高周波誘導炉(3t炉)へ更新しました。
溶解時の最大電力が1500kWから2300kWへと大幅にパワーアップしたことで高速加熱が可能となり、エネルギー効率の改善から設備更新後はエネルギー使用量が大幅に削減され省エネ化が実現できています。
また、以前の2.5t炉の際は容量的に出湯した後の残湯が少なくなり、次に溶かす際にエネルギーが伝わりづらく、溶湯を作るまで時間がかかり注湯が進まない「湯待ち」と呼ばれる状態がありました。湯待ちにより、造型ラインがストップし砂が乾き不良が出る、もう片炉の酸化が進行し不良に繋がるといったことがありましたが、更新後は湯待ちもほとんどなくスムーズになりました。省エネ化はもちろんの事、不良率や時間ロスなど様々な観点から効率化がされました。
今後はもう1基も更新を行い更なる省エネ化を図り、環境対策にも取り組んでいきたいと考えています。
大洋産業の省エネ化への取り組みも下記サイトにて紹介されていますので、ぜひご覧ください!
活用事例検索について | 省エネ事業 | SII 一般社団法人 環境共創イニシアチブ Sustainable open Innovation Initiative

今回は大洋産業の高周波誘導炉の仕組みについて解説させていただきました。
操業中の様子は大洋産業のInstagram・X(旧Twitter)でも見る事ができます✨
次回の記事もお楽しみに!

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