鋳物は鋳型から取り出した直後、砂が付着して黒く酸化し、ごつごつとした表面をしています。「この状態から完成品のような滑らかな姿になるの？」と驚く方も多いでしょう。
そんな鋳物がキレイになる秘密は、『ショット設備(ショットブラスト装置)』にあります。鋳物が使える状態に仕上がっていく過程には、この設備が欠かせません。
この記事では、ショット設備が何をする機械なのか、どんな仕組みで表面がキレイになるのかをわかりやすく解説します✨
ショット設備とは？
鋳物は砂の鋳型から作られているため、鋳型から崩して取り出した直後は写真のような状態です。
製品の表面には砂がこびりついており、高温で酸化して黒くなっています。場所によってはバリや段差が残る場合もあるため、このままでは強度・外観ともに不十分なので、製品として使用する前に必ず表面仕上げが必要となります。
そこで重要な役割を果たすのがショット設備です。
ショット設備とは、鋳物の表面に「ショット」と呼ばれる金属でできた、大きさ0.数㎜～数㎜程度の細かい粒状の投射材を高速で吹き付け、表面の不要物を除去したり整えるための装置のことです。
ショットが高速で衝突することにより、砂を落とし、酸化膜を除去することができます。
また、表面に微細な凹凸をつくることで、後工程の塗装をする際に密着性・耐久性を高める効果も得られます。鋳物工場の現場では、仕上げ工程の中心的存在です。
どうやってショットを飛ばすの？
ショットを飛ばす仕組みは以下の2つです。
・ホイールブラスト方式（機械式ショットブラスト）
モーターで羽根車(ホイール)を高速回転させ、遠心力でショット材を高速投射します。
投射物は回転する羽根車から吐出され、広範囲にあたるため大量処理や高速処理に適しています。主に大規模な工場ラインに多い方式です。
・エアブラスト方式（圧縮空気式）
圧縮空気の力でノズルからショット材を吹き付ける方式です。銅や錫などの比較的柔らかい工芸品等は、サンドブラストと呼ばれる砂を空気で噴射する装置でも使われます。
やや処理速度は遅いですが、投射速度や角度の調整がしやすいため、細かな部分や複雑形状、微細な溝の処理もでき繊細な表面加工が可能です。
初期設備投資が比較的小規模で済むため、小ロットや特殊加工に適しています。
ショット設備の方式
大洋産業では、前文のホイールブラスト方式でショットをおこなっています。
ショット設備の方式は鋳物の形状によって種類を使い分けています。
・クレーンショット
製品をフックに吊り、回転させながらショットを当てる方式。
大洋産業ではマンホールの蓋枠などで使用します。中型～大型鋳物に対応し、製品がぶつかりにくく、外観品質が安定しやすいのが特徴です。
また、大洋産業では使用していませんが似たような方式でハンガーショットという設備も存在します。見た目は洗濯物を干しているような感じで製品をフックに引っかけ、クレーンよりは小物に特化したタイプもあります。
・テーブルショット
回転するテーブルの上に鋳物を直接置き、ショットを当てる方式。
比較的ショット力が控えめで、他の方式では製品同士がぶつかって割れたり曲がったりしてしまう恐れがあるため、薄板形状の中小サイズの製品等に使用しています。テーブルに並べて片面ずつショットにかけるのが特徴です。
・エプロンショット
エプロン(ベルトコンベア)内部に鋳物を投入し、撹拌しながらショットを投射する方式。
製品が転がりながら色々な角度からショットを当てられるので、内部形状の複雑な製品や小さいサイズで大量生産の製品にも使用しています。
・シェイクブラスト
設備内がブランコのように左右に揺れて、その間を製品が通過する際にショットを投射する方式。
大洋産業のショット設備の中でも一番大きく、羽根車(ホイール)が全部で5ヶ所設置されています。他の方式が1回で何個分ショットをかけられるか決まっていますが、この設備では常に製品を入れながら処理することができます。パワーが強いため、薄板形状や中小サイズには不向きな点があります。
その他にもドラムショットやコンベアショットといった設備も、一般的な工場ではよく使われています。これだけたくさんのショット設備を持つ企業も珍しく、多品種に対応できるのが大洋産業の特徴と言えます！
設備の種類や方法を使い分けることで、大きさや形の違う鋳物でも効率よく仕上げることができます。また、摩耗が激しいため、日々のメンテナンスは欠かせません。設備だけでなく、使用する投射材も使い続けると消耗して小さくなるため、投入量の管理・投射時間の調整も重要になってきます。
ショット設備は、製品を美しく、使える状態に仕上げるためにとても重要な役割を担っています！
今回はショット設備について、解説をさせていただきました！
次回の記事もお楽しみに✨
