鋳物製品は、自動車のエンジン部品や産業機械、街中のマンホール蓋に至るまで、私たちの暮らしのあらゆるところで使われています。
その製造工程の中で、製品の形や品質を大きく左右する重要な工程のひとつが「造型(ぞうけい)」です。
造型とは、溶かした金属を流し込むための鋳型(いがた)を砂でつくる作業のことです。
この鋳型が正確でなければ、どんなに高品質な金属を使っても、欠陥のない鋳物はできません。つまり、造型の精度=製品の品質と言っても過言ではないのです。
そんな造型を正確かつ効率的に行うために活躍するのが「造型機」です。現代の鋳造工場では、自動化や省力化が進み、造型機が人の手に代わって安定した鋳型づくりを実現しています。
造型機の性能や種類によって、生産性や品質、さらにコストまで大きく変わるため、まさに「鋳造の心臓部」と呼ばれる存在です。
今回は、造型機の基本原理・種類・特徴について解説します✨
造型とは?役割と基本原理

鋳造とは、溶かした金属を型に流し込み、冷やして固めて製品をつくる方法です。
その型をつくる工程が「造型」であり、製品の形状を決める最も重要なステップと言えます。
造型では鋳物砂(※)と呼ばれる砂に、模型を押し当てて型をつくります。現在でも製品によって手作業でつくられる事もありますが、現在は自動造型機によってい高精度・高速に造型ができるようになりました。
造型では、製品の形状を正確に再現すること、金属の流れを安定させること、そして鋳巣やガス欠陥などの不具合を防ぐことなどが重要です。
つまり、良い鋳型が良い鋳物を生むということです。
※鋳造に欠かせない「鋳物砂」とは?~種類とその特徴を解説~
造型機の基本的な仕組み

造型機の基本的な工程は、次の3つで構成されています。
1.砂の充填(じゅうてん)
型枠に鋳物砂を均一に入れる工程。
砂の密度が均一でないと、強度や寸法精度にムラが出てしまいます。
2.締固め(圧縮)
空気圧や振動、油圧などを使って砂を強く締め固めます。
これにより型の強度が確保され、溶かした金属を流し込んでも崩れにくくなります。
3.型の取り外し(抜型)
模型を抜いて、金属を流し込むための空洞を形成します。
これらの工程を自動で高精度に行うのが、造型機の役割です。
造型方式の違いによって、砂の詰め方・締固め方・抜型の方法が変わってきます。
主な造型機の種類と特徴
造型機にはさまざまな種類がありますが、代表的なものが下記のとおりです。
それぞれの仕組みや特徴をまとめると次のようになります。
・ジョルトスクイズ造型法
自動造型機で一番オーソドックスな方法がジョルトスクイズです。
上下に分割した模型と湯道がついたパターンプレートに鋳枠をセットし、上から砂を入れます。振動(ジョルト)を加えると、砂が細かい部分まで流れ込み隙間なく充填されます。その後、砂を上下から加圧(スクイズ)することで、砂型をしっかり固めます。
重力を利用して上から下へ砂が流れるため、横や下から砂を充填することはできません。
・ブロースクイズ造型法
鋳枠内に空気を吹き込む(ブロー)ことによって砂を充填させる造型法です。上下型それぞれにノズルから砂を同時噴射して砂を充填させた後、圧力をかけて固めます。突き固め後の鋳型の硬度はジョルトスクイズよりやや性能が劣り、特に背の高い製品は不向きとなる点はありますが、上下型を同時に造型することができるため、製造ラインのサイクルスピードが速くなる点がメリットと言えます。
そのため、大量生産向けの製品を作る際に使用されます。
・静圧造型法
ブロースクイズでは砂を吹き込んでいましたが、静圧法では砂を投入した後に鋳枠に蓋をして一方から空気を送り込み、もう一方から排気することにより締固めを行います。
ブロースクイズより均一な鋳型硬度が出しやすく、精度の高い製品が作れる点や騒音振動が少ない点がメリットと言えます。
中小型の鋳鉄部品やアルミ部品の製造に使用されることが多いです。
・自硬性鋳型
大型鋳物や産業用鋳物では自硬性鋳型を使った造型法が一般的です。
詳しくは※鋳型・製法による分類~砂型鋳造法について~をご覧ください!
造型機の進化
近年、造型機の技術は急速に進化しています。
1.自動化・ロボット化
砂の充填・型の搬送・抜型作業など、これまで人が行っていた工程が自動化されています。
これにより、作業者の安全性と生産効率も大幅に向上しました。
2.IoT・データ管理
造型条件(圧力・温度・湿度など)をセンサーで監視し、最適な造型をデータで制御することで、品質の安定化とトレーサビリティの強化が進んでいます。
3.3Dプリント造型
砂を積層して直接鋳型をつくる技術も!模型や型枠を使わず、設計データから即造型が可能となります。試作・小ロット生産で注目されています。
4.環境対応技術
低臭・低VOCの樹脂バインダーや、リサイクル砂の再利用が進むなど、環境負担を減らす取り組みも広がっています。
造型機の進化が鋳造品質を支える
鋳造において、製品品質を左右する最大の要素のひとつが造型です。
金属の流れや鋳物表面の仕上がり、寸法精度に至るまで、すべては鋳型の出来映えにかかっています。そして、その鋳型を正確に安定して作り出すための要が「造型機」なのです。
近年では造型機も大きく進化しており、空気圧・振動・化学反応を利用した多様な方式に加え、自動化やIoT化による精密制御も進み、造型条件の最適化や品質の一貫性が高いレベルで実現されています。
人の熟練技術と融合することで、より安定した生産体制が可能となりました。
大洋産業でも、造型技術を駆使し「高品質」「高効率」「環境配慮」を兼ね備えたものづくりを追求しています。
高品質な鋳物は、精度の高い造型から生まれる。
これからも私たちは、信頼される企業を目指し、お客様のものづくりを支え続けていきます。