大洋産業で製造している製品は全て、金属を流し込むための鋳型を砂で作る砂型鋳造法(※)で鋳物づくりを行っています。この砂型鋳造法で鋳型を作る材料として重要なのが「鋳物砂(いものずな)」です。
今回は、鋳物砂の種類やその特徴を解説させていただきます✨
※鋳型・製法による分類~砂型鋳造法について~
鋳物砂とは?
鋳物砂とは、鋳造において金属を流し込むための鋳型や中空部分を作るための中子(※)を製作するために使用される砂のことを言います。
もちろん使用する砂は何でも良いわけではなく、鋳造に向いている性質が必要とされるため以下のような特性が求められます。
※鋳造工程で使用される『中子(なかご)』って何?~用途・作り方まで解説!~
・造型性
原型となる模型の形状を正確に型取りできる造型性が必要となります。マンホール蓋のようにデザインがあるものは絵柄が綺麗に転写される必要もあります。細部まで砂が充填できる流動性が重要となります。
・通気性
鋳造時には溶かした金属や鋳型から多量のガスや水蒸気が発生します。そのため、これらのガスを型の外へ逃がす通気性が求められます。通気性が不足するとキライと呼ばれるガス欠陥不良や、湯回り、浮かされ、バリ、湯潜り、鋳型割れ(※)など様々な不具合に繋がります。
※鋳物製造で発生する鋳造欠陥とは?~種類・原因・対策を解説~
・強度
溶かした金属を流し込む時に加わる衝撃や圧力に耐え、流し込みが完了するまで形状を維持できる十分な強度が必要です。砂型試験によってどの程度の圧力まで耐えることが出来るか測定し、またその砂によって作られた鋳型の実際の強度をチェックすることも重要です。
・耐火性
高温の金属を流し込むため、高い耐火性が求められます。砂はある温度で急激に膨張する点もあるため、膨張率やクッション性、耐熱性も大切となってきます。
耐火性が不足した場合は焼き付き不良が多発してしまうこともあります。
・再利用性
製品が固まった後、砂型は壊して回収されます。鋳物砂は再生処理を行い再利用されるため、繰り返し使用しても性質が大きく変化しないことが望まれます。
使い古されて小さくなった砂は微粉として集塵機に吸われて取り除かれますが、微粉も一定量無いと鋳型が崩壊する原因にもなり得るため、粒度分布の調整が必要不可欠になってきます。
鋳物砂の種類
鋳物砂にはいくつか種類があり、使用目的や鋳物の種類によっても様々です。
代表的な鋳物砂は以下の通りです。
・珪砂(けいさ)
砂型鋳造で最も一般的に使用される鋳物砂が「珪砂」です。
粘土分が2%以下で二酸化ケイ素が主成分となっている砂で、天然珪砂と、荒い粒を粉砕加工した人口珪砂の2種類があります。号数によって砂の粒度が変わり、号数が高いほど粒度が小さくなります。一般的には、主となる砂にベントナイトなどの粘結材や、添加剤、水分等を混ぜ合わせ押し固めて成型されます。
鋳鉄などの高温の金属にも耐えられる程の耐火性があることや、手に入りやすくコストパフォーマンスにも優れており、管理も比較的しやすいため古くから鋳造に用いられています。
一方で熱膨張しやすい点等によって、寸法精度や鋳肌(※)に影響を及ぼす場合があるため、ベントナイトなどの添加物を混ぜることによって鋳型特性を調整して使用します。
※鋳肌・・・加工していない鋳物製品の表面
・山砂
山砂は粘土分を2%以上含む砂のことで、日本各地で発掘されている天然の砂です。
そのままの状態でも粘結力があるため、少量の粘結材を加えるか、水分を加えるだけでも造型することが可能です。
材料が少なくて済むことや日本の様々な地域で採取できるため、安価で製作できることがメリットと言えます。
一方で天然の砂のため、採掘場所や時期によって粒度にばらつきがでる場合もあり品質の安定性には向いていません。
・特殊砂
珪砂や山砂と比べて高価ですが、鋳物の品質向上や欠陥防止に優れた性質を持っている砂です。
代表的な特殊砂としては、「ジルコンサンド」「クロマイトサンド」「オリビンサンド」「アルミナサンド」等が挙げられます。耐火性が非常に高い、熱膨張が小さい、科学的安定性が高いなど様々な特徴があります。
鋳物砂は、製品を形にするための鋳型をつくる必要不可欠な材料の一つです。
製品として姿を残すわけではありませんが、綺麗な製品に仕上がるかどうか、不具合がなく作れるかどうかは、鋳物砂にかかっていると言ってもいいほどです。
鋳物砂がしっかりしていなければ、良い鋳物は作れません!鋳物砂は鋳造を陰で支える縁の下の力持ちのような存在ですね✨
今回は鋳物砂について解説をさせていただきました!
次回の記事もお楽しみに✨