鋳物の金属の種類による分類と解説~鉄系金属~

前回までは、鋳造の製造法についての解説をさせていただきました。
 鋳型・製法による分類~砂型鋳造法について~
 鋳型・製法による分類~金型鋳造法について~
 鋳型・製法による分類~その他特殊鋳造法について~

今回は鋳物製品を作るときに溶かす金属の「種類」についてです。
金属は大まかに分類すると「鉄系金属」「非鉄系金属」の2つとして考える事ができます。
それぞれの素材で鋳物を作ったときにどのようなものに使われているのか、どのような特徴があるのかについて、今回は「鉄系金属」について解説させていただきます。

鉄系金属は酸化して表面に錆が発生しやすいため一般的には耐食性に劣りますが、耐久性や強度に優れているため、多くの用途で使用されています。
大きく「鋳鉄」「鋳鋼」で分かれており、鋳物でよく使われる鉄系金属の例としては以下のようなものがあります。

鋳鉄(ちゅうてつ)

鋳鉄とは、鉄を主成分に2.14~6.67%の炭素と数%のケイ素を含んでいる鉄の合金の総称です。
鉄中にある程度炭素が含まれると、鉄の凝固点(液体から個体に変化する温度)が低くなり比較的容易に型へ流し込み形成することが可能な事から、鋳造作業に向いています。
耐久性に優れている点から、機械部品、家庭用の鍋、道路に埋まっているマンホールなど幅広く活用されています。
また、鋳鉄にも種類があり、マグネシウム等の添加剤や熱処理等を加え用途に合わせて特性を変化させたものもあります。
ここからは、主な鋳鉄について解説していきます。

・ねずみ鋳鉄

鋳鉄で代表的なものが「ねずみ鋳鉄」です。
もっとも一般的で広く使用されており、炭素がグラファイト(黒鉛)の状態で含まれ、破面(割った面)がねずみ色をしているのが特徴的です。
硬さや圧縮強度には優れますが、片状の黒鉛を起点に割れが発生しやすく、引っ張りや曲げに弱いです。
※グラファイト(黒鉛)とは…炭素からなる元素鉱物の一種。熱や電気をよく伝える物質で、鉛筆の芯などにも使用されている。

・黒鉛球状化鋳鉄(こくえんきゅうじょうかちゅうてつ)

「ダクタイル鋳鉄」とも呼ばれ、溶かした鋳鉄にマグネシウムを加え反応させることで黒鉛を球状化し、ねずみ鋳鉄の欠点である強度や伸びを補う事ができます。
ねずみ鋳鉄の数倍の力にも耐えられる強度や、伸びに優れており割れにくいことから、自動車部品やマンホールなどに使用されています。
一方で減衰能(振動を吸収する能力)では、ねずみ鋳鉄の方が有利なので使う場所や要求される性能により、黒鉛球状化鋳鉄にするかねずみ鋳鉄にするか選択して使い分けられることが一般的です。

・CV鋳鉄

黒鉛形状がいも虫に似ていることから「バーミキュラ黒鉛鋳鉄」とも呼ばれ、ねずみ鋳鉄と黒鉛球状化鋳鉄の中間の性質をもつ鋳鉄です。
強度はある程度保ちつつも切削加工にも優れており、鍋やフライパンなどの日用品に使用される事が多いです。
ねずみ鋳鉄と黒鉛球状化鋳鉄の良い所を持ち合わせる反面、性能や品質がどっちつかずになりやすく管理も難しい点はデメリットとなります。
※バーミキュラとは…ラテン語で蠕虫(ぜんちゅう)という意味。

鋳鋼(ちゅうこう)

炭素を0.02~2.14%含んだ鉄の事を鋼(はがね)と呼び、中でも鋳造用に使われるものを鋳鋼と言います。
鋳鉄と大きく違う点は、鋳鋼は鋳鉄に比べ炭素の含有量が少ないことから強度が高く、伸びも高くなる点がメリットと言えます。
そのため、強度を要求とされる自動車や航空機等の機械部品の製造で用いられることが多いです。
その反面、鋳鉄と比較すると溶ける温度・凝固点が高く、固まる際に体積の収縮も大きいため鋳造を行うには高い技術力が求められます。

その他にも、鋳鉄・鋳鋼にニッケル・クロム・アルミなどを添加した特殊合金の鋳造や熱処理によって性能を改善する手法などもあり、製品の用途や特性に合わせて様々な種類があります。
以前に解説した鋳型の製造法についても沢山の方法がありましたが、使用される金属の種類も沢山あります!

次回は、非鉄系金属について解説をさせていただきます!

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