前回、解説しました鉄系金属に引き続き、鋳物の金属の種類についての解説をしていきます。
今回は「非鉄系金属」についてです。
非鉄系金属とは、鉄系金属で大きく2分類した「鉄」「鋼」以外の金属のことです。
金属そのものを使用する場合もありますが、金属にその他元素を入れた合金として使用される場合がほとんどです。
アルミ・マグネシウム等の『軽金属』、銅・スズ・亜鉛等の『ベースメタル』、ニッケル・ビスマス等の『レアメタル』、金・銀等の『貴金属』等、金属の種類も多く、用途に合わせて様々な製品が作られます。
鉄系金属は鉄を含むため耐食性に劣る点がデメリットでしたが、非鉄系金属については、金属の種類によりますが、耐食性がある点や、軽量・電気伝導性が高い点等、その金属の特徴を利用できる点がメリットと言えます。
一方で、供給量はあまり多くないため鉄系金属よりも高価になる傾向があります。
鋳造にも使用される代表的な非鉄系金属は以下のとおりとなります。
アルミニウム
非鉄系金属の中でとくに代表的に使用されている金属がアルミニウムです。
アルミは鋳造のしやすい素材で軽いながらも比較的強度があるため、自動車部品や航空機部品等が代表的な製品です。
また、切削等の加工性のしやすさ、電気・熱伝導性が良く、非鉄系金属の中では一番入手しやすいといった点がメリットと言えます。
一方で、耐熱性が低い点や柔らかく変形しやすい点はデメリットと言えます。
マグネシウム
マグネシウムは金属の中で最も軽い金属と言われているため、ノートパソコン・携帯電話・一眼レフカメラ等の本体で多く使用されています。
マグネシウムは粘り気が少ないため、流動性が高く鋳型に流し込みやすいため薄肉製品が作りやすく軽量化が可能となります。また、軽量でありながら強度も比較的高い点や、放熱性・振動減衰能・切削性などにも優れている点がメリットとなります。
一方で、アルミニウムと比較すると耐食性が悪い点や、金属の中で最も燃えやすく、機械加工などで出た削りカスの取扱いについては注意が必要になります。
亜鉛
亜鉛は高度・耐衝撃性にも優れており、製品が錆びないように行う塗装やめっきなどの表面処理がしやすいため、色や質感の仕上げを綺麗にすることができるため、ドアの取っ手やトロフィーと言った装飾品等でも使用されます。
また、融点が約420℃と低いことから金型を鋳型としたダイカスト方(※)で製造される事が多く、金属の温度が低い事から金型の痛みが少なく製造コストを抑えられる点もメリットと言えます。
一方で、融点が低いため、高温に弱く熱による変形が起こりやすい点がデメリットとなります。
※鋳型・製法による分類~金型鋳造法について~
銅
人類が最初に鋳造を始めたのが銅と言われています。
銅は電気伝導性・熱伝導性に優れているため電極部品に使用されたり、耐食性・耐圧性にも優れているため油圧や水圧のかかる船舶部品、水道関係でも多く使用されています。
銅は伸びやすく削りやすいという特徴もあるため、機械加工もしやすい点がメリットと言えます。
一方で融点が高いため金型を鋳型として使用する事が難しく、基本的には砂の鋳型(※)をはじめとした製造法で使用される事が一般的なため、アルミニウム等と比較すると大量生産には向いていない点があります。
※鋳型・製法による分類~砂型鋳造法について~
・真鍮(しんちゅう)
真鍮は上記の銅・亜鉛の合金で、別名「黄銅(こうどう・おうどう)」とも呼ばれます。
銅と亜鉛の割合によっていくつかの種類に分かれますが、一般的な特徴としては電気伝導性が高い点や、切削性が高い点がメリットです。黄金色に輝く見た目の美しさから仏具やインテリア、一番身近なところで5円玉にも使用されています。
一方で、応力腐食割れの一種とされる「置割れ」が発生する場合があります。機械加工を施した真鍮が日時の経過により、大気中の水分や二酸化炭素などが結晶粒界(※)に腐食を引き起こし、粒界腐食を起こす点がデメリットと言えます。
※結晶粒界とは…金属を原子レベルで拡大してみると、原子がある程度規則正しく並んでおり、この塊を結晶粒と言います。方向性の違う結晶粒同士の境目を結晶粒界と呼び、粒界を起点に腐食が進行する事を粒界腐食と呼びます。
錫(すず)
錫は融点が約230℃と、金属の中でもかなり低い温度で溶けだす金属です。
熱伝導率にも優れている事や、空気中・水中でも錆びることはなく、毒性のある物質が溶け出すこともないため食器類等で使われます。
金・銀に並ぶ価値があった希少な金属のため、見た目の美しさも特徴的です。
一方で、融点の低さから熱に弱いため直火や電子レンジ等の熱でも溶けだしてしまう点や、とても柔らかい金属のため落としたり強い圧力や衝撃で凹んでしまうため丁寧に扱う必要があります。
以上、非鉄系金属の代表的な例を解説させていただきました。
最後に解説した錫(すず)は大洋産業で運営している「鋳造体験工房 Caster Home」でも使用していて、おちょこや小皿など様々なアイテムを自分の手で作る事ができます!
ご興味のある方はぜひ遊びに来てくださいね!
次回の解説もお楽しみに✨